大判例

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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)103号 判決

右兩名に對する強盜殺人被告事件につき、昭和二十四年三月二十九日福岡地方裁判所飯塚支部が言渡した有罪判决に對し、被告人からそれぞれ控訴の申立があつたので當裁判所は、檢事野田實治立會の上審理して、次の通り判决する。

【主文】

原判决を破棄する。

被告人兩名をそれぞれ無期懲役に處する。

押收の檢第四號(占領軍拂下シヤツ一枚)は被害者德久彌十郞に還付する。

訴訟費用は全部被告人兩人の連帶負〓とする。

【理由】

被告人兩名主任弁護人山本新控訴趣意は、末尾添付の控訴趣意書と題する書面記載のとおりである。

第一點に對する判斷

原判决は、有罪の言渡をするのに、罪となるべき事實に對する法令の適用を示すにあたり、刑法第二百四十條第六十條(無期刑選擇)と表示した。しかし刑法第二百四十條の處罰規定は、前段と後段とに分かれ、前段の刑は無期又は七年以上の懲役、後段の刑は死刑又は無期懲役となつていて、兩者の刑の間には格段の輕重の相違があるので、同條の前段を適用するのと、後段を適用するのとでは、判决に重大な影響があること明白であるから、その前段を適用するのか後段を適用するのかは、判决にこれを明示しなければならないこともとより當然である。原判决は無期刑選擇の趣旨を示しているので、選擇刑として無期懲役刑の定めである方の規定を適用する趣旨であることは明らかであるが、無期懲役刑は、同條の前段にも後段にも規定してあるので、無期懲役刑選擇の趣旨を示しただけでは、未だ果してその前段を適用したのか後段を適用したのかこれを判定することができない結局原判决には、法令適用の誤があり、その誤は判决に影響を及ぼすことが明らかであるのでこの點に關する論旨は理由あり、原判决は破棄を免がれない。

よつて、その餘の論點に對する判斷を省略し、刑事訴訟法第三百八十條、第三百九十條により原判决はこれを破棄すべきであるが、但し、本件記録並びに原裁判所において取り調べた證據によつて、直ちに判决をすることができるものと認められるので、刑事訴訟法第四百條に則り、當裁判所において、本件について更に判决すべきものとする。

(罪となるべき事實)

被告人兩名は從兄弟の間柄であり、被告人市丸は、昭和二十三年十二月八日船員生活をやめて後、本籍地の親もとにも歸らず、就職口を求めて門〓、廣島等の各地を轉々していたもの、被告人藤瀨は、その本籍地附近の農家に作男として稼働するうち、同年十二月十日頃、主家の玄米一俵を盜み出したことが發覺し主家を出奔して以來佐賀市内などを徘徊徒食していたものであるが、同被告人が小遣錢に窮した揚句、嘗て福岡縣嘉穗郡上穗波村大字山口字荒谷農業石橋カネ方に止宿稼働したことがあり、同人方附近の知人を賴つて働き口を求めようと考え、同月二十三日佐賀驛に赴いた際、同所でたまたま適當な就職口もなくて歸鄕の途上にあつた被告人市丸と出合い被告人兩名は、同月二十五日相連れ立つて石橋方に赴いたが、都合のよい働き先も見當らず、所持金もとぼしくなつたので、恐喝でもしようと、翌二十六日飯塚市に出向いたものの、その機會がなくて目的を果さす、いよいよ途方に暮れた末石橋方に忍び込んで金員を窃取しようと話合い、翌二十七日石橋方に立越して、同夜は同家の納屋に身をひそめて明かし、翌二十八日午後一時頃、同家の母屋に入つたことろたまたま雇女奧野ヒメ子當時三十年が一人留守居していて家人が不在であつたところから、むしろ同女を殺害して金品を奪取しようと相謀り、ここに被告人兩名共謀の上、同日午後三時過頃、同家入口土間の所で炭俵を編んでいる同女の身邊に近づき被告人市丸は、同女の後方から突如その首を絞めつけ、被告人藤瀨が手渡した手斧を受取り同女の頭部を毆打してその場に昏倒させ更に同女を同家物置に引入れた上、右手斧で頭部その他を亂打してその場に即死させ、金員を物色したけれども予期した現金が見當らず、その場にあり合わせた同居人德久彌十郞所有の占領軍拂下シヤツ一枚(檢第四號)及び石橋カネ所有の餠少量を奪い取り、もつて強盜殺人の目的を遂げたものである。

(證 據)

一、原審公判調書中被告人兩名の供述記載

一、被告人市丸義太郞の司法警察員に對する第一回供述調書

一、被告人藤瀨信夫の司法警察員に對する第一回供調書

一、原審における證人石橋カネ、同德久彌十郞に對する各訊問調書

一、原審における檢證調書

一、鑑定人醫師關口正郞作成の鑑定書

一、原審公判調書中、檢第二號(手斧)同第四號(占領軍拂下のシヤツ一枚)が原審公判廷に顯出された旨の記載

以上を綜合して右事實を認定する。

(法令の適用)

被告人兩名の所爲は、いずれも刑法第二百四十條後段第六十條にあたるので、所定刑のうち各無期懲役刑をえらんで被告人兩名をそれそれ無期懲役に處し、主文掲記の押收物件は、被告人らが右犯行によつて得た臟物であつて、被害者に還付すべき理由が明らかであるので、刑事訴訟第四百四條第三百四十七條第一項により、これを被害者に還付し、訴訟費用の點に關しては、刑事訴訟法第百八十一條第一項第百八十二條を適用し、被告人兩名をして、全部これを連帶負擔せしむべきものとする。

以上の理由により主文のとおり判决する。

裁判官 石橋鞆次郞 筒井義彦 柳原幸雄

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